糖尿病の診断指標「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」調査結果発表
日本生活習慣病予防協会オンラインセミナー
6~7月は一般に健康診断の季節。例年、人間ドックや社内健診を受けているのに、コロナ禍のため受診を見送ってしまう人がいるという。日本生活習慣病予防協会がこのほど実施した「血糖負債」オンラインセミナーでは、糖尿病の診断指標として重要な「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」に焦点を当てた調査結果を発表した。一般生活者の認知度が4割未満にとどまっている「HbA1c」を「知る・測る」ことが、糖尿病リスクを減らすことにつながる。
コロナで重症化も
第1部では、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の綿田裕孝教授が、血糖を管理する上で医学的に最重要視されるものとして「HbA1c」を挙げた。
血液中の赤血球を構成するタンパク質であるヘモグロビンが血中のブドウ糖と結びついたもので、計測時の食事の影響を受けず、過去1~2カ月間の平均的な血糖レベルが分かる。この「HbA1c」が高い状態が続くことを「血糖負債」と表し、体に負担が蓄積されて、さまざまな健康障害が懸念されるという。
この「血糖負債」は体形依存的ではなく「やせている若年女性や正常体重の中年男性が抱えることもある」という。さらに、2型糖尿病の患者が新型コロナウイルスに感染した場合に重症化する可能性についても言及した。
8割の医者が警告
このように、誰もが気にするべき「HbA1c」だが、コロナ禍の現在は値が高くても気がつかないケースが増えている。日本生活習慣病予防協会によると、健康診断などで生活習慣病検査結果の傾向を把握している医者100人と全国の一般生活者3000人を対象にした調査では、半数以上の医者が「HbA1cの数値が悪化している」と回答した。その8割が「糖尿病リスクが高まっている」との実感を明らかにした一方、一般生活者の「HbA1c」計測に対する認知率は4割に届かなかったという。
軽度異常のうちに
これは、糖尿病が「最もかかりたくない生活習慣病」の1位に挙げられている中で、予防に対する正しい認識は浸透していないことを意味している。そもそも「コロナ禍で健康診断・人間ドックの受診が減っている」と約4割の医者が回答し、一般生活者の4人に1人が「コロナ太り」を実感、全体の約半数が「コロナ禍に健康診断・人間ドックを受診していない」と答えていることから、コロナ禍の生活変化でリスクが高まっていることは間違いない。日本人間ドック学会の21年度版判定区分では「HbA1c」の数値で5・6~5・9が「軽度異常」、6・0~6・4が「要経過観察」とされており、これらは糖尿病を警戒する必要のある「要注意層」となる。
糖尿病は一度合併症を引き起こしてしまうと血糖値が下がっても合併症の症状が進んでしまうので、「軽度異常」のうちから血糖値を意識してコントロールすることが重要。つまり、高血糖状態が長く続く「血糖負債」を抱えないようにすること大事だ。
だが、同調査によると数値が基準を超えた場合、どのようなリスクが起こるか理解している人は1割のみ。一方で「基準値を超えないようにコントロールしたい」という人は約8割もいるので、やはり「知る・測る」ことが重要になってくる。まずは健康診断を受診し、自らの数値を把握することが大切だ。
HbA1cとの上手な付き合い方
第2部に登場したリンクアンドコミュニケーション最高公衆衛生責任者の佐々木由樹さんは「HbA1cとの上手な付き合い方」をテーマに講演。管理栄養学の観点からメンタルケアや食事療法までを紹介し「適切な量をバランスよくとることが大切」と説明した。
「血糖負債」防止の具体例として、「ダイエットは食事量を減らすのではなく、カロリーを調整」、「1日に1食分は未精製の主食に」、「野菜・果物を1日にもう1皿」などと提案した。デザートには、ベリー類など糖質が控えめなフルーツと、たんぱく質とミネラルが豊富なヨーグルトなどを勧めた。
「血糖負債」防止の具体例
「ダイエットは食事量を減らすのではなく、カロリーを調整」
「1日に1食分は未精製の主食に」
「野菜・果物を1日にもう1皿」
<6月23日 スポニチ本紙掲載記事>