日本に必要な評価モデルとは? GEGは、ローカル調達や雇用など地域貢献に強み
今年10月に国土交通省より基本方針案が更新され、IR事業者はこの開発要件を満たし、持続可能な経営を行うことがますます求められています。今回は、これまでにゲーミング規制について語っていただいたコーエン氏に、基本方針案についての考えや、日本の評価モデルの是非、成功するIR事業者に必要なことについてお伺いしたいと思います。
統合型リゾートの成功に必要な評価モデルは、インプット、アウトプット、またはアウトカム?
「新規統合型リゾート開発の提案を評価するために、様々な方法が活用できます。プロセスの中で最も重要なことは評価自体ではなく、最初に導入される評価モデルです。設計、技術力、財務力、社会的なセーフガードやその他のアセスメント基準を確立する前に、先ずは大枠の評価モデルを決めておくことが必要です。評価する際に、インプット、アウトプット、またはアウトカム(成果)のどれを評価すべきなのでしょうか。
そもそも、その違いは何でしょうか?インプットは、量を測定しますが、質を測ることはほとんどありません。最も一般的なインプットは、支出額です。例えば、新しい病院を建設するために5億ドルの政府資金を費やすことは、4億ドルを使うより20%高いように思えます。しかしこの測定法では、どれだけの費用が使われるかを示すだけであり、それが賢く使われているかまでは分かりません。
アウトプットの測定は、何がどれくらいの量生産されているのかを示します。しかし、必ずしもその製品の有用性について教えてくれるわけではないでしょう。病院の例を挙げると、新しい病室数や、上記の5億ドルの投資資金で賄える治療数などがアウトプットに当てはまります。この測定方法では、投資に対して、何が生産されたのかを確認できますが、同様にそのアウトプットが有用かは分からないのです。最良の方法は、成果を特定することです。上記の例で考えると、望ましい成果は、地域社会の医療の改善度合いです。確かに結果を定量化することは難しい場合があり、そのために利用されないことも多々あります。」
日本の評価モデルについてどのような考えをお持ちですか?
日本のように、独自のIR実施プロセスに乗り出している国にとって、ここに教訓があります。入札候補事業者の中には、日本での統合型リゾート開発に100億米ドル以上を投じることを公言している企業もあります。おそらく表向きは世論や政治的支援を自社の方に振り向かせるためかもしれないですが、一部の都道府県は、このレベルの財政的コミットメントへの支持を表明しています。
しかしこのような約束は、有用性に関する評価が限定的であるインプット基準として見なされるべきです。100億米ドルの支出は、来場者数、建設の質、提案されたノンゲーミングサービスのいずれかの有用性または持続可能性、もしくは開発によって生み出される雇用数への影響についてなにか示していますか?答えはノーです!
それでもなお、日本は理論上では正しい方向へ向かっています。IR整備のための基本方針案は、成果重視型の素晴らしい例と言えます。全体を通じて求められる成果を明記しているからです。例えば、評価基準案の<ウ>の項において、同案では「IR区域の整備について、地域における十分な合意形成がなされており、IR事業が長期的かつ安定的に継続していくために不可欠な地域における良好な関係が構築されていることが求められる」としています。
この目標は日本特有のものではありません。メルボルンからマカオまで、多くの管轄区域で求められてきました。例えば、マカオのギャラクシー・エンターテインメント・グループ(GEG)は、地元の中小企業のための様々な支援プログラムを開発してきました。GEGのブロードウェイ施設に立ち並ぶ活気あるレストランや飲食店は、コミュニティ内に統合型リゾートを開発することによって、地元の小規模事業者にどれだけの恩恵があるかを示しています。
今後、日本および正式な事業者公募に乗り出す都道府県にとって重要なことは、その評価プロセスが、基本方針で示されている方向性に沿っていなければならないということです。提案では、日本を世界に向けて発信する、そしてそれによって日本の経済を強化するうえで、それぞれの事業者が提供する成果に関して評価するべきです。それによって、MICE業界の強化、サプライヤーとなる地元の中小企業の支援、質の高い新たな雇用の創出、そして統合型リゾートおよび国全体に多くの観光客を惹き付けることなどが可能になります。最終的には、予想税収と経済的インパクトの評価まで実施・測定することもできます。
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