「おうち時間」難関折り紙で心が折れた

・芸人が釣る【番外編】
釣れないのはつらいよ!吉本興業のお笑いコンビ「官兵衛」の伊藤貴之は、コロナのせいでお笑いの仕事もなく釣りもできない日々。そこでチャレンジしたのが…。

一万円かけて新しい「芸」模索も…

ハウツー本購入
新型コロナウイルスの感染拡大で皆さまが一番気になるのは、「伊藤ちゃんの健康状態は?ちゃんと生活できてるの?」ですよね。
心配ご無用でございます。伊藤はそれなりに元気にやってます!何も仕事がない期間に、若手芸人は皆、新たな特技、スキルを身に付けていて、ネット上で仕事にまでつなげている輩(やから)までいます(クソぅ!)。

1万円かけて覚えた折り紙の鶴。左はダンビラムーチョ大原

たとえば版画、ちぎり絵、ウクレレ、三味線、けん玉。この期間に始めてもう仕事になっている。凄いですね。
僕の武器はもちろん釣りですが…。実は何を隠そう伊藤も新たな特技を身に付けようと動いておりました!
普遍的で昔からある物。子供が喜ぶ物。手軽な物。そのキーワードで脳内検索して、行き着いたのは、折り紙でした。
思い立ったら、すぐ行動。気付けば折り紙のハウツー本をAmazonで物色し、初級、中級、上級本の5冊を買いあさりました。計8100円なり。
「先行投資なので仕方ない」と自分に言い聞かせ、併せていろいろなサイズの折り紙も買い、結局1万円を超える若手芸人にとってデカい買い物になりました。
「これで折り紙をマスターしたら、すぐに元が取れるから」
そう思っていたところに、同居人のダンビラムーチョ大原に「高い買い物しましたね。ネットで作り方見たらタダなのに」と言われてしまい、完全に面食らいましたが、「本の方が詳しく書いてるやろしたくさん作品載ってるから」とめちゃくちゃ強がりました。
本当に元も子もないド正論を叩きつけられて深くダメージを負った僕の元に商品が届きました。

鶴しか折れず…
本を開けると、いろいろな作品があって本当に楽しい。可愛い、カッコいい。
「これを今から折るんだ」と意気込み、作り方のページに目を向けると…見たこともない記号や折り方。
どれも「難しい」てもんじゃないレベル。
「そーだ!初級の本を見たらこんな難しくないはず。まずは初級から」と思い開けている本を閉じたら、その本の表紙に「初級編」と書かれていました。
折り紙の厳しさを思い知らされ、膝から崩れ落ち、うなだれた僕は、他の本を開けても何一つ作れず、結局作れるようになったのは鶴だけでした。
本当に高い買い物になりました。

こんな〝外道〟でいいから早く釣りたい

芸人とは、ネタがスベったり、結果が出なくて挫折するものだけど、このコロナの自粛期間中に挫折を味わった芸人は僕だけな気がします。
現実を知ってさらに落ち込むのが怖いので、ネットで「折り紙」は検索していません。
こんな思いしないためにも、早く僕に釣りをさせてください。

伊藤貴之(いとう・たかゆき)
1986年(昭61)生まれ、岐阜県出身の33歳。18年に石橋俊春とお笑いコンビ「官兵衛」を結成しデビュー。よしもと若手の劇場、無限大ホール(東京・渋谷)で修業を積んでいる。

 

※内容は掲載時のものです。
スポニチ2020年5月22日付