学ばない男 サワラに連敗

・芸人が釣る【東京湾】
吉本興業のお笑いコンビ「官兵衛」の伊藤貴之が狙ったのは東京湾のサワラ。ルアーのキャスティングで勝負だ。

集中切れて糸切られ×2 学ばない男 サワラに連敗

スポニチデビュー戦では大型サワラを釣った伊藤(左は「FUJIWARA」の原西)

東京湾のガイド船「ゴーゴーガイドサービス」に乗船。僕の中でサワラという魚は、特別な存在です。この「芸人が釣る!」の連載1回目の企画もサワラだったからです。

どうしても大物を釣りたくて、粘りに粘ってラスト10分に97・5センチ、5・4キロの大物を劇的に釣り上げて華々しいスポニチデビューを飾らせてもらいました。

今回はYouTubeチャンネル「イトーが釣る!」のために、オープニング動画もしっかり撮り、俯瞰(ふかん)カメラをスイッチオン。頭にはアクションカメラ「ゴープロ」をセット。撮影態勢はバッチリ。これでいつサワラが来てくれても大丈夫。

 

 

ポイントに着くと、サワラが至る所で跳ねまくり。テンション爆上がりの中でサワラ専用ミノーを投げ速巻き。ひたすらサワラが跳ねた場所に投げ込みます。するとジジジッ。開始30分で引ったくるような強い引き。間違いなくサワラです。

引きに耐えながら糸を2、3巻きした後に、頭の「ゴープロ」に片手をかけスイッチオンしたと同時にプツンッ。糸が切られてしまいました。

苦し紛れでなんとかイナダ50センチ

バラして呆然とする伊藤

サワラの歯は物凄く鋭いので糸のテンションが緩みでもして少しでもPEラインに歯が触れたら切られてしまうのです。

船内で「あーぁ」というため息。船長からも「何やってんだよ伊藤ちゃん!」とあきれ声。
結局その日はその後一切当たりもなく、オデコでフィニッシュ。ゴープロに手をかけたことを物凄く悔いました。

3日後、また海の上でサワラを追っ掛けていました。もちろん新たなオープニング動画も撮り直して。
2度目のサワラ釣行は1度目より渋く、サワラの跳ねすら一度もありません。ひたすら魚探の反応を頼りにルアーを投げ続けると…また引ったくるような強い引きが。片手で「ゴープロ」のスイッチをオン!緩むラインテンション。プツン!切られるライン…。僕に学習能力はないのか?

その後、50センチのイナダを何とか上げてこの日も終了。これからは「ゴープロ」付けずに、釣りに集中します!

今回は不手際もあってイナダのみ

◎芸人こぼれ話

小型バイクの免許を取得しました。車の免許・原付の免許があれば教習所で8時間の実車訓練と卒検をクリアできれば小型バイクの免許がもらえるのです。

35歳になり、人に何かを教わる機会が少なくなった自分としては「先生に教わる」という行為がとても新鮮で教習所に行くのが楽しかったです。

コロナ禍でバイク需要が高まり、人でごった返す教習所でいろいろな世代、職種の人が入り交じっての授業に刺激をもらい気付けば卒検の当日を迎えました。

1度だけ授業をしてくださった先生が僕のことを覚えてくれていたようで「受かるとイイね」と言ってくれました。なんだかんだで腐っても芸人。僕も他の生徒よりは存在感があったようです。

無事合格して、帰宅しようと軽い足取りで受付を通り過ぎた時、ふと「今日でこの学校に来るのも最後か」。急にノスタルジックな気持ちになり、気付けば衝動的に受付に引き返していました。

僕が芸人だという事を唯一知っていた受付のお姉さんを見つけ、深々とお辞儀をし「お世話になりました!」と大きい声でお礼を言うと「お名前とご用件は?」。いや全く覚えられてないやん!
まさか教習所で、芸人としての自分の存在感のなさを思い知らされるとは思いも寄りませんでした。

お世話になったあの人にお礼を…覚えてないんかーい!

 

伊藤貴之(いとう・たかゆき
1986年(昭61)生まれ、岐阜県出身。18年に石橋俊春とお笑いコンビ「官兵衛」を結成しデビュー。

※内容は掲載時のものです。
スポニチ2021年9月29日付